Newsポストセブンに「 みのもんたの終活 焼却炉購入、社長退任、葬式やらない宣言」という記事が掲載されました。
その内容について私は「今っぽい考え方の人だな~」と率直に感じました。しかし…みのもんたさんのように考える皆様は、今の時代では大勢いらっしゃいますので、まったく不思議ではありません。
本題ですが…タイトルからも分かるように、お葬式についても書かれています。
一部、引用させていただきますと・・・
葬式は、やりません。僕が死んだら、お坊さんにお経を読んでもらってすぐ焼いてもらう。親族だけの密葬です。告別式はやりません。だって、義理で参列しなきゃいけない人にとっては迷惑でしょう。自分が死んで誰かに手間をとらせることはしたくない。密葬のために、最期の言葉は録音して残そうかなとは思っています。
特に赤字のテキスト部分になりますが、この内容を実行したら…どのような葬儀スタイルになるのか解説いたします。
また、皆様にとっても勘違いしていることや何となく知っている葬儀用語もあると思いますので、確認の意味も込めて一読ください。
ポイントは、この3つ
- 葬式は、やりません。告別式はやりません。
- お坊さんにお経を読んでもらってすぐ焼いてもらう。
- 親族だけの密葬
実は…コレ…すべてを同時に叶えることはできないんです。なんとなく方向性としては簡略化のような感じがしますが、つじつまが合わないこともあります。
何かを優先し…何かを諦めるしかない
みのさんの執り行いたいお葬式は、葬儀業者であれば容易に想像できますが、実行するとなると…何かを優先し何かを諦めなければなりません。
そこは、将来…業者と打ち合わせをすれば解決することですが、それが…「どんな内容なのか?」を、ここで整理したいと思います。
それでは、1つづつ確認していきましょう。
❶ 葬式は、やりません。告別式はやりません。
「葬式をやらない事」と「告別式をやらない事」の差ってご存知ですか?
みのさんご本人は「両方ともやりません!」とおっしゃられていますが…上記の内容だと、確実にお葬式をすることなります。
お坊さんがいたら…完全に葬式になっちゃいます!
まず葬式ですが…葬式とは、葬儀ともいいます。葬儀とは葬送儀礼【そうそうぎれい】の略です。
そして…葬送儀礼とは、死者を葬り去る一連の儀礼となります。そこには、北枕(枕直し)や納棺(湯灌)など、家族・親族で行う儀礼。そして、お坊さんによる読経や引導などの儀礼も当然…含まれます。
そうなると…〔❷ のお坊さんにお経を読んでもらってすぐ焼いてもらう〕という希望を叶えることができません。ですので、どなた様でも葬式を行わないこと自体が難しいのです。
葬式 と 葬儀 の違い
一般的に、葬式でも葬儀でも…納棺⇒通夜⇒葬儀⇒火葬までの全体を指しますが、葬儀は…通夜の翌日(2日目の儀式)のことだけを指す場合もあります。
例えば…、葬儀という言葉を使う場合は「通夜は参列するけど、葬儀は参列しない」のように、間違えたくない場面で明確に分かるように使用されています。
お坊さんが不在の葬儀は、お葬式と呼べるのか?
例えば…お坊さんは不要でも「家族で納棺しメイク(死化粧)をしてあげたい!」というご遺族様も大勢いらっしゃいます。
このような希望でも、故人を送る儀礼に含まれますので、お坊さんが不在でもお葬式と呼んでよいでしょうし、ご遺族様もお葬式だと感じることでしょう。
※ 地域にもよりますが、お坊さんあっての葬式…と認識している皆様もいます。
ですので「お坊さんがいない葬式なんて見たことない!」という人の為に、お坊さんが不在の葬儀を〔お別れ会〕とか〔無宗教葬〕と区別し「宗教者がいない葬儀なんですよ!」と、葬家側が念を押すこともあります。
お坊さんから見た葬式とは?
葬式は基本的に、故人と僧侶(お坊さん)と近親者だけで成り立ちます。また、故人と僧侶だけでもお葬式としてはOKです。
なので、会葬者の人数や斎場の場所などは…お坊さんからすると葬式には関係ありません。
お坊さんの務めは、故人の魂の供養
お葬式は、あくまでも死者を葬り去る儀礼です。特に…お坊さんからすると死者の供養の為であり、会葬者が2人でも100人でも・・・会場が自宅でも斎場でも執り行う儀式は同じです。
また、故人はお棺の状態でも…お骨の状態でも構いません。供養の対象は故人の魂ですので、最悪…お骨すらなくてもお坊さんはお葬式をしてくれます。
お坊さんにとっては、お寺の本尊と故人の位牌だけでOKなんです。祭壇や供花、遺影なども用意するに越したことはありませんが、なくても問題ありません。
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ここまでをまとめると…お葬式を行わないようにするには、ご永眠されてから故人とは一度も会わずに火葬を業者へ委託し、その遺骨までを処分する必要があります。
さすがに、ここまでされるご遺族は見たことがありません。「葬式とは故人を送る一連の行い」ですので、規模に関係なく…お葬式を行わないこと自体が難しいのです。
告別式はやりません。葬式との違い
次に、葬式 と 告別式 の違いになります。
告別式とは、故人と縁のあった皆様に偲ぶ機会を提供すること
告別式とは、参列者(弔問客)を招いて故人を偲んでもらう機会になります。なので、お坊さんが不在で大丈夫なお葬式(お別れのカタチ)となります。
お別れの仕方は、焼香や献花など…葬儀スタイルにより異なります。また、火葬後に告別式を1日だけ執り行う場合もありますし、故人のご遺体が斎場に安置されていないこともあります。
このような方法は、芸能人や著名人などの葬儀で利用されています。密葬と本葬というカタチになりますが、詳しくはこちらで紹介します。
認知のされかたは「葬儀 + 告別式 = お葬式」
お葬式のイメージって「お坊さんが読経している間に、参列者が焼香をする」ではないですか? 2日目の葬儀の時間帯も、お昼前後でほぼ1時間だと思います。
現状は〔葬儀ならびに告別式〕というカタチで執り行われている
訃報用紙にも、葬儀(告別式)と書かれています。
一般のご家庭の葬儀では、式場の利用時間の都合上…葬儀と告別式を1時間にまとめて執り行っています。それが普通だと思われている人も大勢いらっしゃるでしょう。
ですので、時間や斎場の都合が付けば…葬儀と告別式を別々の日に執り行っても全く問題ありません。しかし現状は、時間や費用の都合から1日で済ませています。
昔は一般のご家庭でも葬儀と告別式を分けて行っていました
告別式が通夜となっている現状
また、近親者以外の参列者にとって…参列する機会は2日目の葬儀(告別式)ではなく、1日目の通夜だと思います。
なので、通夜が告別式代わりなっており、喪主からの御礼のあいさつも参列者が多い通夜される場合もよくあります。
昔は、通夜・葬儀・告別式…それぞれの役目がありましたが、現在ではカタチだけが残り生者の都合で葬式が行われているのが現状です。
なぜ、告別式をやりたがらなくなったのか?
告別式は、参列者の為のイベントです。近年、近親者以外の参列者を招かない葬儀が圧倒的な支持を得ています。
それが…よく耳にする〔家族葬〕や〔直葬〕という葬儀スタイルになります。
葬儀に対する価値観の変化
以前の日本では、見栄や体裁もあり必要以上に葬儀に費用をかける傾向がありました。しかし、時代の変化とともに身内だけで済ます葬儀が好まれてきています。
もう、葬儀で見栄をはりたい…という価値観は、日本人には余りありません。なので、葬儀に対するパワーはなく、逆に面倒くさそう…お金はかけたくない…というデメリットのほうが上回ってきます。
また、人を招くという事は接待をしなくてはなりません。返礼品や食事を用意し…もてなさなければなりませんので香典での収入があるとはいえ、出費のほうが大きくなってしまいます。
告別式はやりません…は叶うのか?
企業の代表でもあり一時代を築かれた、みのもんたさんですが、告別式をやらない…という事はなかなか考えにくいと思います。
それは、ご本人の意思でも自分で実行することができないからです。残されたご家族がお別れの機会を提供したい…と考えれば告別式が実行されるでしょうし、企業としての社葬も考えられます。
死後のことはコントロールできない
薄葬を望んでも、葬儀の主催は残された生者です。多くのケースでは、遺族により普通以上の葬儀に格上げされて実行されます。
お釈迦様や真宗の祖師…親鸞、一部の天皇も薄葬を希望しましたが、残された生者により手厚く葬られました。
現在では直葬も支持されるようになってきましたが、それでは納得できない…と考えるご遺族様も多くいらっしゃいます。ですので、薄葬を希望する人ほど…薄葬にならない…傾向が今でもあります。
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葬式と告別式の違いをまとめると…
葬式とは、故人を送る一連の儀式となり、告別式とは…故人を偲ぶ機会を提供すること になります。別の言い方をすると、葬式は故人の為のイベントで、告別式は会葬者の為のイベントになります。
そして現状は、2日目に葬儀と告別式が同時に並行して行われていますが、告別式に参列するより通夜に参列する会葬者が圧倒的に多く、通夜が告別式の代わりとなっています。
また、通夜を省略し〔お別れ会〕や〔無宗教葬〕といった告別式を1日だけ執り行うこともできます。
❷ お坊さんにお経を読んでもらってすぐ焼いてもらう。
もし…この希望だけを葬儀業者に伝えると・・・〔直葬〕か〔家族葬・密葬〕のどちらかの葬儀スタイルになります。
とりあえず近親者だけで葬式を執り行いたい…という意図がくみ取れますので、日程や祭壇の有無により、どちらかの葬儀を選択することになるでしょう。
参列者は近親者だけでも、祭壇は不要、日程も1日だけよい…となれば〔直葬〕になりますし、祭壇は必要で通夜と葬儀はしたい…となると〔家族葬・密葬〕になります。
また、「親族だけの密葬」という希望もありますので、この密葬を…みのさんご自身が、どんな葬式として認識しているのか?…によっても実際の葬式が変化するでしょう。
焼いてもらう…とは?
ちょっと…表現が雑のように聞こえますが、生まれた年代により表現の仕方が異なります。
- 火葬する ⇒ 焼く
- 火葬場 ⇒ 焼き場
ご相談の際は「いつ、焼くの?」とか「焼き場は、どこ?」など、特にご高齢の皆様は普通に使われます。
どんな、流れになるの?
もし〔直葬〕となったら、いつ…お坊さんに読経してもらうのか? 気になるかもしれません。そこで、お坊さんがお経を読むタイミングと時間について紹介します。
火葬炉近くで10分以内の読経
ご遺族やお坊さんの都合にもよりますが、火葬場の中にお経を読める場所と時間があります。これを業界では〔炉前〕や〔窯前〕、〔火葬炉前〕などと呼んでいます。また、お坊さんに伝えても理解してくれます。
業者が提供する〔直葬〕だけのサービスでは、お坊さんの読経は付属されません。菩提寺のお坊さんであれば、事前に相談して都合を付けてもらう必要があります。
また、お坊さんとの付き合いがなく、葬儀業者から紹介してもらう場合は有料サービスとなります。
読経の時間は、どこの火葬場でも…時間の都合により読経は5分から10分程度で…ごく短い時間となってしまいますので、そこが注意点となります。
「お坊さんにお経を読んでもらってすぐ焼いてもらう。」という言葉を文字通り実現したとしたら、葬儀業者へ「直葬に窯前読経を付けて!」と依頼することになります。
もっと長い時間…お経を読んで欲しい場合には?
この場合には、1日だけの葬儀を行ったり、檀家さんであれば…火葬をする前にお坊さんのお寺で読経を依頼するしかありません。
すると、葬儀業者が提供する〔直葬プラン〕より手間が増えてしまうので、料金的には上乗せになってしまいます。このあたりの調整は、葬儀前に確認しておく必要があります。
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❸ 親族だけの密葬
密葬【みっそう】というと…字のごとく親族以外には知らせず密かに行うお葬式。とイメージされる皆様もいらっしゃると思います。
それもアタリなのですが、もう1つ別の意味があります。
本葬のための密葬
本葬【ほんそう】とは、社葬や著名人のお別れ会など…規模が大きく葬儀を執り行うまでに時間がかかってしまうお葬式のことです。
その為、密葬というカタチで親族を中心に宗教的な儀式や火葬までを先に執り行ってしまいます。これで、ご遺体の腐敗を心配する必要がなく本葬の日程も自由に決めることができます。
葬儀の前に火葬してしまう地域は今でもあり、骨葬【こつそう】などと呼ばれています。私が住んでいる山梨県上野原市も骨葬がスタンダードです。
ですので、本葬での故人はお遺骨の状態…または遺影と祭壇だけ…ということも珍しくありません。前者の場合は主に仏教葬儀となり、後者の場合は告別式やお別れ会などの無宗教葬となります。
規模の大きな葬儀でも、社葬 兼 〇〇家の合同葬儀として通常通り…通夜・葬儀の2日間で行う場合もあります。
葬儀業者から見た密葬とは…家族葬と同じ
葬儀業者に密葬の相談をすると、90%は家族葬の希望だと捉えられてしまうでしょう。
密葬と本葬をセットで考えるご遺族様は、ほとんどいません。それより、密葬 = 家族葬 と思っている皆様のほうが圧倒的です。
家族葬と密葬は同じカテゴリー
家族葬と密葬の葬儀内容や料金は同じです。業者によって〔家族葬プラン〕や〔密葬プラン〕などありますが、商品名の違いだけで内容は変わりません。
地域によっては例外もあります。
地域によっては、通夜と葬儀は行わず近親者だけで火葬だけを行うことを密葬と呼ぶ場合もあります。
これなら、みのさん希望とも合致します。ただ…ご遺族様が考えている密葬や直葬、家族葬と、葬儀業者が提供している密葬プランや直葬プランの内容が一致するとは限りませんので、事前に確認することが大切です。
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密葬についてまとめると…
多くの皆様にとって 密葬 = 家族葬 で大丈夫です。葬儀業者的には、密葬 と 家族葬 は別物として捉えており、密葬といわれたら本葬のことも頭によぎるでしょう。
あとは、ご自身が認識している密葬の内容と葬儀業者が提供する密葬の内容が一致しているか? 確認しておく必要があります。
最後のまとめ
現在のお葬式は、昔とは異なり「何かを省略したい!…やりたくない!」と考えるご遺族様が圧倒的です。
- 告別式に人を呼びたくない
- お坊さん(お布施)を省略したい
- 日程を省略したい
- 費用をかけたくない…
などなど、お葬式に対するモチベーションは低く「直葬でよい」と考える人も、この先増えていくことでしょう。
しかし、お葬式の内容を決定するのは残された家族になり、それを本人が確認するすべはありません。ですので、お葬式ついては、ご本人より家族の皆様が知識を得ておく必要があると思います。
安易に直葬を希望しても、ただ安いだけのお葬式になってしまう可能性も十分あります。なので「どのように送りたいのか?」を考え、事前に葬儀全体の流れを把握されるのがベストです。