「菩提寺(ぼだいじ)が、あるけど、無宗教葬で済ませる事ができるのか?」というご質問をいただきました。
結論から申しますと…
無宗教葬はできますが…菩提寺のお坊さんを招いた仏式葬儀も執り行わなくてはなりません。結果、2回…お葬式を行う事になってしまいます。
例えば・・・
式典の順番は、どちらが先でも構いません。先に行った式典で火葬も行います。2回目の式典では、お骨だけの場合や遺影だけになります。



または・・・



このように、場所や会葬者の人数は問いませんが、菩提寺の寺墓地に納骨をする為には…仏式葬儀は避けることはできず、2回分のお葬式を行わなくてはなりません。
お葬式では、故人様も遺骨も必ず必要な訳ではありません。
地域によって異なりますが…通常のお葬式であれば、故人様や故人様の骨が納骨された骨壺を祭壇に安置するが普通です。
しかし、著名人のお別れ会では、ご遺体や骨壺が安置されている訳ではなく、祭壇と遺影を飾り…参列者が故人を偲ぶ場所となっています。
仏式葬儀においても、供養するのは魂ですので…その魂が入った位牌と仏教で大切な本尊があれば、お葬式として成立します。
ですので、火葬をしてから葬儀をする…という、通常とは逆の流れで行う事もありますので、地域によってお葬式の常識は異なります。
無宗教葬を望む理由
菩提寺をお持ちのご遺族様が、無宗教葬を望む理由は…ほぼ2つです。
- お布施の費用を軽減もしくは負担したくないから
- 故人や家族の強い要望があるから
このような理由ですが、菩提寺をお持ちのご遺族様がお葬式を行う場合…仏式葬儀は避けられません。
ここで、ご遺族様からいただく質問を例に紹介します。
❶ お布施の費用を軽減…もしくは負担したくないから
たまに、ご相談を承るのですが…下記の例はNGとなります。
- 無宗教葬や直葬で火葬まで執り行う
- 骨壺をお寺に持っていき、納骨をお願いする
すると・・・
- 住職と揉める
- お墓の引越しを要求される
- 戒名を付けて、もう1度…葬儀を執り行う ※
・・・という、オチが必ず待っています。
※ この場合…葬儀業者は介入せず、お寺の本堂内で、ご住職とご遺族だけで行う葬儀となるでしょう。
納骨の条件としては・・・
お寺さんの立場からすると…「墓地の永代使用料」と「お葬式のお布施」は重要な収入源となります。
ですので、無料でお墓だけを使わせる訳にはいきません。お葬式を菩提寺の僧侶が務めるは…お布施を納めてもらう理由が必要だからです。そして、戒名を付ける理由も同じです。
そうでないと…ただのボランティアとなり、お寺を存続させる事ができません。
お寺さんにとって…お葬式の場所や会葬者の規模は関係ありませんが…お墓に入る前に、戒名を授け葬儀を行う事が納骨の条件になります。
事前の対策
どうしても、お布施を包みたくない場合は、葬儀前に菩提寺から離檀(りだん)しなければなりません。
さらに離檀の際は、お墓を更地に戻し、ご先祖のお骨をどこかへ移す必要があります。この一連の流れを【改葬(かいそう)】または【墓じまい】とも呼んでいます。
菩提寺と檀家(だんか)の関係を知っておく
お寺の敷地にお墓を建てるという事は…そのお寺が菩提寺となり、建てた施主は檀家になります。
檀家になってしまうと、無料でお墓に納骨する事はできません。必ず菩提寺のお坊さんによる葬儀を行い戒名を授からなくてはなりません。
公共の墓地であれば宗教の制限が無く、納骨したい時に納骨できますが…寺墓地では菩提寺と檀家の関係なので、納骨するには葬儀が絶対に必要になります。
❷ 故人や家族の強い要望があるから
どうしても…無宗教葬やお別れ会をしなければならない皆様や、理想の式典や進行がある…というご遺族様もいらっしゃいます。
著名人の場合
よく、著名人のお悔やみのニュースなどで、「葬儀は近親者で済ませており、後日…お別れ会を開く予定です」という内容を聞いたことがあるかもしれません。
この場合「葬儀は近親者で済ませており…」という部分が、菩提寺をお持ちの場合は…仏式葬儀となっており[密葬]とも呼ばれ、この時点で火葬まで執り行います。
そして、「お別れ会を開く予定…」の部分が、無宗教葬という事になり、多くのファン(参列者)が故人を偲ぶための機会となります。
このケースでは・・・
お寺さんからすると…仏式葬儀を執り行っていますので問題ありません。その後、お別れ会を開こうが…お寺さんはノータッチです。その後、お好きな時に納骨してもらえます。
一般の皆様は「そこまでは…しない」のが現状
一般のご遺族様となると「そこまでして、お葬式を2回に分ける必要はありますか?」となると・・・「やっぱり、お坊さんを呼んで1回で済ませたほうが、いいよね…お金も掛かるし…」となってしまいます。
無宗教葬で執り行う必要や理由があるのか?
告別式やお別れ会といった…「無宗教葬儀を絶対にしたい!」…というご遺族様は、実は…あまりいらっしゃいません。
例えば…菩提寺を持っていないご遺族様の場合は…どのような葬儀スタイルでも問題ありません。しかし現在でも7割~9割のご遺族様が仏式葬儀を選択されます。(※ 直葬は除きます)
その理由は・・・下記の通りです。
- 普通のお葬式のイメージが仏式葬儀だから…
- 親戚に配慮する為
- はじめてのお葬式だから
などなど…菩提寺を持たず、どんな葬儀でも可能であるのにも関わらず、仏式葬儀を行うご遺族様が、まだまだ大勢いらっしゃいます。
あえて無宗教葬を執り行うには、理由があります。
菩提寺をお持ちのご遺族様が、あえて無宗教葬を執り行うには、それなりの理由があります。
菩提寺を持っているに、無宗教葬を考えている…というご遺族様は、故人様の遺志や遺言を実行する為に無宗教葬を選択されます。
はじめて無宗教葬で送られた人 中江 兆民
中江 兆民という方は、1847年に土佐藩の下級武士に生まれ、その後…政治家・思想家として活躍した人物です。
その…中江 兆民の著【一年有半】では、無仏・無神・無精魂を主張し、宗教的儀礼を否定しています。また、葬儀を行わない事に強いこだわりを持ち、お墓も不要…と遺言を残し54歳で亡くなりました。
しかし、葬儀を行わない…というのも考えものなので、日本で初の告別式(無宗教葬)で送られ、宗教にとらわれない東京都立の青山霊園に眠っています。
ご遺族様なりのイベントで送りたい
中江兆民のような、遺志やこだわりを持つ方は、なかなか…いないと思いますが、ご遺族様によっては、イベントを用意したい…弔問客との時間を取りたい…などの理由で無宗教葬を選ばれています。
- 長い時間を使って弔問客に見せたいVTRがある
- 読経ではなく音楽を流して送りたい
- 焼香や献花だけではなく、直接…故人の顔を見て欲しい
などなど…仏教葬儀ですと、お坊さんの儀式や読経で、これらのイベントの時間が無くなってしまいますので、無宗教葬にしなければなりません。
注意点としては、無宗教葬は自由葬でもありますので…葬儀業者によって料金の違いが発生しやすくなります。その為、事前の相見積もりは時間をかけて行う必要があるでしょう。
・・・
・・
・
いかがだったでしょうか?
檀家である以上[仏式葬儀・お墓・お布施]はセットですので、そこだけは…ご注意ください。
しかし、手順を踏めさえすれば…無宗教葬も執り行えますので、皆様にとっても故人様にとっても最良のお葬式をご選択ください。