なぜ?日本人は、葬式に金をつぎ込んだ…のか?日本葬制史から解る、近代のお葬式事情

現在でも、日本は葬儀代が高い…と言われていますが・・・

なぜ…葬式やお墓に、お金をつぎ込む事が普通になったのか…? この日本葬制史という本から見えてきます。

この日本葬制史には、縄文時代から現代までの葬送や墓制について、複数の執筆者により構成されています。

特に印象的な一文が、こちらです。

今日の葬送・墓制の返還の背後にあるのは結局は社会の変化であり、それに合わせて死者に対する生者の態度も変化していく。

葬儀やお墓の現場をみていると…まさに、その通りで、ご遺族様(生者)のニーズによって大きく葬送・墓制が変化します。

お葬式が高額だった理由

それは…江戸時代から存在する一定の客層日本人の気質が影響しています。

以下、引用です。

葬礼に金をかけようとする住民の出現によって、葬送文化に格差と格付けが生じていたといえよう

日本人というのは、世間体を気にして借金をしてでも盛大な葬儀をおこなおうとする人びとだ

葬送の華美化に対する熱い情熱が、ときにはそのせいで自分の首がまわらなくなってしまうほど、町人たちの間で確実に根付いていた

最近の人は、親の存命中はさして孝行心をみせないくせに、いざ親が亡くなると、葬礼を美麗にし、僧侶や会葬者を数多く呼び込んで、これこそが親孝行だといっているが、実にけしからん

かつては葬列の立派さが死者の社会的地位を誇示したが、それに代わって葬儀場における祭壇のランクを表す指標になった

・・

いくつか引用させていただきましたが、江戸時代になって葬儀にお金をかけ始めたのは、商人や有力農民でした。

当時…一部の葬送儀礼は、相続人のお披露目や家のステータスなど、生者の為のイベントになっていた事もあります。やがて高度経済成長もあり、多くの人々が葬儀やお墓にお金をかけるようになりました。

現在でも、この流れは一部で引き継がれています。

特に直葬などの葬儀スタイルが浸透していない地域では、周りの目を気にしたり「風習だから…」と…葬儀ローンを組んでまで高額な葬儀を執り行っています。

上昇志向、世間体や見栄

大正までの葬列や、それに代わる祭壇も、弔問客に見られることを意識して、だんだん豪華になっていきました。

また、葬式に参列する人々も、喪家が使う棺のグレードや祭壇の大きさを、ちゃっかりと品定めしていました。そして、人々の上昇志向もあり、豪華に…大きく…見せたいという生者の都合が葬儀費用を増大させました。

葬儀業者に依存しすぎた事

葬儀業者の前身は、葬具を販売するだけの輿屋や棺屋でした。

ですので、葬儀の進行や決定権は葬家や世話役にありました。しかし、時代と共に…死体への忌避感が生まれたり、生活のうえで都合が悪くなったりと…葬儀業者を利用する頻度が高まりました。

そうして…すべてを頼った結果・・・品質に見合わない金額を請求する悪質業者が増加しました。

現在は…というと・・・?

現代人にとって、葬儀やお墓、戒名への価値感は著しく減少しています。

  • 家族葬や直葬など…葬儀の小規模化
  • 無縁墓・墓じまい(改葬)の増加
  • 仏教葬儀に価値を感じない

江戸から昭和までの憧れであった…豪華な葬列や祭壇は、すでに魅力を失い…「心を込めて故人を送ることができれば…それで良い…」という葬送・墓制にシフトしています。

葬儀業者は、葬家のニーズに合わせ低価格の葬儀プランを販売したり、無宗教形式や儀礼を省略した直葬も請け負っています。

そろそろ…苦しい葬式仏教

以前から仏教は葬式仏教と言われていますが、なんだかんだで現在でも8割以上の葬儀が仏教形式です。

現在…檀家制度はありませんが、今でも「浄土へ行きたい!」「死んだら良いところへ行きたい!」と願う…ご高齢の皆様は、かなりいらっしゃると思います。

その想いを叶えてくれるのが…僧侶や葬儀・お墓だと考えていらっしゃるので、しばらくは… 葬儀 = 仏教形式 が続くと思います。

しかし、平和な時代に生まれた世代にとって、浄土や死んだ後の世界には興味がなくなっています。

平安時代~戦国時代に生きた人々と現代人とでは、考え方や葬送で重要視するポイントが異なっていますので、自動的に僧侶(葬式仏教)の需要も減っていくでしょう。

葬儀やお墓が無くなる事はありませんが、お坊さんが関わらない形態が今後…増加し一般的になることは避けられそうもありません。

・・・
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葬儀代が高いと思われているのは、最近だけ…そういう時代があったから

葬式代が高いと感じるのは、たまたま…そういう時代に生まれたからで、長い葬送の歴史から見ると、ほんの短い期間です。

1000年前に生まれていれば、死体を道端や河川に放置されるのが普通でした。

現在、お葬式といったら通夜と葬儀の2日間ですが、そのうち…通夜を知らない世代が多くなり、祭壇を飾らない直葬がスタンダードになる確率が高いと思います。

結局のところ…

今日の葬送・墓制の返還の背後にあるのは結局は社会の変化であり、それに合わせて死者に対する生者の態度も変化していく。

生者によって古墳を造ったり、葬儀屋が誕生したり、墓参りの風習が起こりましたが、長い歴史から見ると…これらが、そのうちに無くなっても不思議ではありません。

昭和まで盛り上がった庶民の葬送と墓制ですが、現在の生者が望んでいるものは…簡略化、小規模化、最適化です。

  • 簡略化  = 葬式仏教離れ
  • 小規模化 = 少人数葬儀と墓のコンパクト化
  • 最適化  = 先祖の墓じまい・引越し(改葬)

遠い将来では、昭和のような豪華な葬儀や墓が流行るかもしれませんが、この先…数百年くらいでは必要以上にお金をかけない薄葬時代が続くのではないでしょうか…。


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